グローバル人材の育成という言葉が教育目標として掲げられていました。
英語が堪能で、海外でも活躍できる人材を養成しよう、というものです。
ですが、こうした取り組みが適切かどうか、疑問です。
第一に、世界では反グローバリズムの動きが強くなっています。
英国のEU離脱、トランプ大統領の選出、フランスの黄色いベスト運動など。
第二に、グローバル化した世界は、公正な世界ではありません。
経済的格差の拡大や、民主主義の機能不全が、必然的に生じます。
グローバル企業の力が増します。
「非正規労働者を雇用しやすくしなければ、生産拠点をこの国から移す」
「法人税を引き下げる税制改革をしなければ、この国に投資しない」
などと圧力をかけられるようになります。
その結果、富める者が富を蓄積し、庶民の生活は不安定化します。
第三に、グローバル人材は、倫理的だと言い難い。
企業の私物化、課税逃れが新聞紙面を賑わします。
自らを育んだ国や地域社会に愛着を持たず、自己利益のみに
突き動かされる人間を作ってしまう恐れがあります。
現在の教育に求められるのは、グローバル化を乗り越え、
荒廃を是正する人材の育成でありましょう。
「ポスト・グローバル人材」の育成が求められています。
そこで、求められるのは、社会的基盤の再生です。
国民の分断を解消し、連帯意識や、相互扶助意識の再構築を図ること。
また、インフラの再整備もそうです。
そうした、ポスト・グローバル人材に求められるのは、
恩を認識し、他者とのつながりに重きを置く価値観です。
国や地域社会、家族など周囲の人々、あるいは、先人の努力のおかげで
今の自分があると感じる謝恩です。
ポスト・グローバル化の時代は、もうそこまで来ています。
世代を超え、人と人との絆を再生し、お互いの価値観を尊重しあい、
一致する点を見つけそこで団結する。
そんな教育が、求められている、と私は思います。